雑記帖

存在します

好きな曲を淡々と紹介する:最近聴いているボカロ

ミーハーというのは精神性をみて言うことなのか結果をみて言うことなのかということを考えることがあるわけですが、そもそもの話として精神性は不可視であるのでそんなことはどちらでもよいということです。通ぶりたいわけでも通ぶりたくないわけでもミーハーと後ろ指さされたいわけでも通ぶってると後ろ指さされたいわけでもなく、ともかく好きな曲というのは好きな曲であるわけです。とはいえ、聴いているからといって今更『あの娘シークレット』とか『アスター』とかを紹介と構えてみるのもどうかという思いはあり、そのような忖度がないとは言いません。

例によって(久々すぎるので例も何もないですが)整序にはクロノロジカル・オーダーが利用されています。2018年の曲ばっかりになったなと思ったので日付も書きましたが、思ったほど多くもなく6曲という結果になったようです。

1.アイロニックメタファー/蝶々P (2014/7/25)
ピアノの踊り方がもはや快楽であるといえます。蝶々Pっぽさというのは多分に存在するもので、それはサウンドの面でも歌詞の面でもそうだったりするわけですが、その破滅的に聞こえる歌詞の落下しきらずににやりと笑うようなさまがあり。ポテチを食べた手でゲームのコントローラを触ると油がテカテカします。

【初音ミク】 アイロニックメタファー 【オリジナル曲】 - ニコニコ動画

2.ONE OFF MIND/蜂屋ななし (2016/2/14)
ことばをそのように並べることが可能であるということに驚くものです。『プレシャスジャンク』を聴いたときにも思いましたが、ある意味では雑多であるという中に一つのトーンを(キャッチーなサウンドの中で)作り出すということに常軌を逸したバランス感覚があるのだと。

【手書きMV】ONE OFF MIND【初音ミク・GUMI】 - ニコニコ動画

3.少女ふぜゐ/みきとP (2016/8/17)
単純に雰囲気に惚れ惚れしてしまうのです。影縫英さんという歌い手の方のヴァージョンも同時にあるのですがわたしはGUMIの方が好きです。「見境なく生きて居たいの」からの一連の流れですっかり落ちてしまうものです。ふとある日にYouTubeの「あなたへのおすすめ」に浮上してきて理由が不明なのですがはてさて。

少女ふぜゐ /GUMIver. - ニコニコ動画

4.ハイタ/ルワン (2017/4/7)
いつの時間に聴くにも適していない曲というのはなかなかないもので、この曲はまさにそういう曲であったのですが、それはあまりにこの曲の磁場のようなものが強くあるからでしょう。いつの時間に聴くにも適していない曲という表現には語弊があり、いつの時間に聴いても『ハイタ』であるという、その意味で恐ろしい曲です。人を引き込むところから最後まで聴かせ/見せきる引力を強く発揮しているという意味でも恐ろしい曲です。

初音ミク 『ハイタ』MV/ルワン - ニコニコ動画

5.Erica/renybox (2018/1/6)
自分が相当に忘れがたい曲に接したのはサビまで聴いて確信するもので、出会いがまったくの偶然であり、かつそれが相当に稀有な幸運であったことは再生数を凝視してみてからに思うものです。かつこれほどの曲であって5000回も再生されていない事実に自分の境遇らしきものを重ねてしまって難しい気持ちになるものです。ともかくただ聴いてみてほしいとだけ書いておきます。

【IA】 Erica 【オリジナル】 - ニコニコ動画

6.flos/R Sound Design (2018/3/8)
マーキア、の音が耳から離れないまま曲名を忘れてしまい、半年後くらいに再会して心臓が跳ねたのを覚えています。『帝国少女』のひと、というイメージがつきすぎてしまうと大変なのかもしれませんが、確かにこのように軽い/刻むサウンドがひとつ特徴であるのは事実でしょう。ある種の純潔として音楽の言葉による表現は歌詞で尽くしてくれると嬉しいなという気分になることはあって、その意味で昨今のMVに思うところはあり、しつこくもその意味ではこちらの方が好きです。

flos/初音ミク - ニコニコ動画

7.spray/有機酸 (2018/3/17)
有機酸名義では(今のところ)最後の曲になっています。下支えはあるものの、『quiet room』『カトラリー』『lili.』といった曲たちと比べるとそこまで伸びてはいず勿体ないものだと思うばかりです。こんなに苦しく切なげな声を作り出せるひとはほとんどいないのに。堀辰雄みたいに淡い歌詞世界だって。もう少し聴かれてくれれば嬉しいものです。

spray/初音ミク - ニコニコ動画

8.夏が終わっていきますね/100回嘔吐 (2018/9/1)
毎年の夏の終わりに何を聴けばいいのかという問いに解答が出てしまって困るのです。というか夏の終わりでなくても聴いたら夏の終わりになります。音街ウナの魅力を生かした曲であるという意味でもこの曲は軽々と正解です。驚くほどに。教えられなくてもわかるくらいにこの曲がいいことがわかるということを解答だとか正解だとか言っています。

夏が終わっていきますね/音街ウナと初音ミク - ニコニコ動画

9.紗痲/煮ル果実 (2018/10/8)
MV自体もそれ自体として一つのドラマティックを提供してはいるのですが、それはそれとしてこんなに変なサウンドなのにこのポップネスは何であろうということに驚くあまり首が360度回転したりしてしまいます。それはもう高速に。上っ面な愛を愛と呼べんなら、とか言う歌詞に弱いのかもしれないとは。

∴flower『紗痲』 - ニコニコ動画

10.おりこうさん/SEVENTHLINKS (2018/10/12)
軽妙なリズムも、サビでの掛け合いのような繰り返しも、サビの終わりの「はらり」も、それを含む少し気の抜けたような歌詞もすべて好きになる要素であって、発表直後から今まで頻度の差はあれずっと聴き続けていていまだに食傷気味になっていないというのは驚くべきことです。歌いたいから100万回くらい再生されてほしいと単純に思っています。

おりこうさん / flower × 初音ミク - ニコニコ動画

11.エヴェレット/あ子 (2019/2/26)
こういうピアノの曲をいくらでも好きになる病とかは特になく、単にこういう曲をいくらでも好きになります。傘村トータさんの柔らかくも強い調声がひどく適切であり、それは例えばラスサビの「『こんなの恋にも満たない』だなんて」を聴いてみて強く実感され、そしてそのように歌詞を聴けばどうやってお別れのことばを選ぼうかと思うようにもなるのでした。

【初音ミク(あ子)】エヴェレット【オリジナル曲】 - ニコニコ動画

12.あわよくばきみの眷属になりたいな/Peg (2019/3/21)
言葉選びの端々にちょっとした毒を少しずつ味わっていくものです。「大好きな人間風情」とか、最後にそっと言い添える「僕は何もいらないよ」とか。歌とそれ以外のサウンドが相当に精緻であることが癖になる耳触りを作り出すのでもありましょう。リンの原曲も十全に好きなのですが、緑仙というある存在による歌ってみたがあり何というか色気がすごいのでそちらも聴いてほしい。

あわよくばきみの眷属になりたいな/鏡音リン - ニコニコ動画

 

それでは。曲紹介にまでオチが要るような気がしてしまって戦々恐々としているのですが、歌を歌うことでしか歌を紹介できないということに気づいてみたりするのかもしれません、とか言ってみても何かが綺麗になるわけではないのでしたね。