1
「これは嘘なんだけど、わたしには渾名がブロッコリーで髪の毛はストレートの友人がいるんだよね」
「そうなんだ」
「どこが嘘かっていうと、渾名がブロッコリーっていうところ」
「君には髪の毛がストレートの友人がいるんだね」
「でも実はその人は天パで、最近ストレートパーマをかけたんだ」
「君には髪の毛にストレートパーマをかけた友人がいるんだね」
「それで、これも嘘なんだけど、前は渾名がブロッコリーだったのにストレートパーマをかけたら渾名がカリフラワーになったの」
「カリフラワーをそんな目で見たことがあるんだ」
「どこが嘘かっていうと、前は渾名がブロッコリーだったっていうところ」
「君には渾名がカリフラワーの友人がいるんだね」
「なんで渾名がカリフラワーかっていうと、ロマネスコが好きっていう自己紹介をしてきたから」
「往々にしてそういう単純化は進行するよね」
「で、渾名をわたしがつけたっていうわけ」
「だから君は私のことをカリフラワーって呼ぶんだね」
2
「わたしのことを下の名前で呼んでくれてもいいんだよ」
「呼んでほしいならそう言えばいいじゃない」
「(恥じらいを見せながら)下の名前で呼んで」
「括弧内の内容をそうそう読み上げるものではないよね」
「君がもしわたしのことをブロッコリーと呼んだとして、それはわたしたちの秘密になるのかな」
「秘密にしようと思えば何でも秘密になるよ」
「『ブロッコリーと呼ばれている友人がいる』という言明はその意味では真偽がわからないよね」
「そうかもね」
「下の名前で呼んでほしいな」
「何がいい?クレオパトラとか?」
「そうやって成立するコミュニケーションがあってもいいのかなとは思う」
「興味ないの逆は興味あるだよね」
「わたしは君に興味ないよ」
「良かった、私も」