雑記帖

存在します

考えごと

沈黙について

むかしむかしあるところに、人がなんのよすがもなく生きているということに不安を覚える人がありました。人であればなんでもいいのですが、とりあえずここではおじいさんであるとしておきましょう。あるいはおばあさんであったり、おじいさんおばあさんであ…

絶対に関する断片

絶対的なものを色々とりかえてみて人が生きていると考えてみるのはどうだろうか? 神は死んだという宣言をまじめに受け取ったのはサルトルのほうで、ニーチェ自身は世界の絶対性に対してはそれなりに楽観的であったような気がする、あるいはそうでなくても、…

水中花

あらゆること、あらゆることについて苦もなく全能をもって語ることができるということ、それとほとんど同時に、それゆえにということではなく、しかしそれと深々と絡みつくような形で、ほとんどのことについてはまったく語ることができず、目撃したものの、…

顔、道具、顔

兄に似てきた気がする。どういうところが似てきた気がするのかといえば顔である。顔が似てくるということがあるのかどうかはわからないが、顔が似てきた気がするのでまあそういうことはあるのだろうとしておく。いやそれは本当はおかしく、顔が似てきた気が…

主人公ではない人について

公爵令嬢メリー。ペチョーリンはピャチゴルスクに滞在している。わかりやすくバイロニズムにかぶれているグルシニツキーは自らを人生の物語の主人公として任じているようで、彼のメリーへの恋はその物語の一頁をなすかのように彼自身には思われるのだが、ペ…

噴水塔

あなたはビルの縁に腰掛けている。あるいは大理石の神殿の柱と柱の間に。あるいは天井の低い、二段ベッドが部屋の半分を圧しているような、西向きの部屋の隅に置かれた、背もたれの低い木製の椅子に。 あなたは座っているのではなく腰掛けているのでなくては…

半年前の覚書より

かつては反時代的であるということに何らかの勇気が必要であったように思われるというか、そもそも時代の潮流というものが幻影的であれ何かテーゼを伴って駆動していたために、それに対して反抗的な態度をとるということもそれはそれで立派であったというよ…

ストーリイ・テリング

あるおにぎりがわたしの目の前にある。ある鬼斬りがわたしの目の前にある。とても美味しそうだ。とても美味しそうなので、写真を適切な角度で撮り、小粋なコメントを付して全世界にこのおにぎりを公開したい。この鬼斬りを公開したい。あるところにそういう…

前髪は釣り糸にできるか

できるとしてするのですか? わたしはしませんよ。でもあなたはするかもしれない。中学生ぐらいのころに「きみ」とか「あなた」とか呼ばれることを極端に嫌っていたことがありましたが、あれはやはり客体化されている感覚に怯えていたということだったのかも…

身体の流離

・死死後の世界の奇妙なところは、そこに至る人がみな、自分の人生の一片の姿、最良ではなかったかもしれないが、多くの意味で扱いやすいと思われる姿で現れることだ。わたしたちはそこには決して10代の姿では現れないし、また同様に80を超えて歩くこともま…

物語のバーチャリティ(あるいは存在について)

つまり久々にバーチャルの話であり、「中の人」論でもあります。バーチャルYouTuberとかVTuberみたいな表現を使うと対象が(意図に反して)狭くなりすぎるという側面があり、何となくバーチャル存在みたいな言葉を使いますがまあ深い意味はないです。 ゲーム…

言葉遣いについて/覚書として

目次 1-9 一人称 10-18 悪口 19-25 ポリグロット 26-32 冗談の形成 33-39 表現の撹乱 40-43 冗談の技術 (一人称) 1.本当に小さいころは可愛らしかったので親から自分がいかに可愛らしかったかということを例を挙げられつつ聞くことがあってやや気恥ずかしく…

教室で戦う人たちに

気恥ずかしいような気もしますしそうでもないような気もしますが、少し書きたくなったことをそのまま書こうと思います。気の回数でも数えておいてください。別に答え合わせはしませんが答えとは本来そういうものです。 実際のところ教室は敵に溢れています。…

はやく人間になりたい

血は赤色です。よしなに。 人間といえば、以前よりしばしばわたしは自分が人間ではないことを公言しており、その背景には面倒な思想であったり廃墟であったりが存在するものですが、今回の話は別にそのことに言及するものではありません(いずれどこかでする…

乱文と黒猫、あるいは年末について

本棚を漠然と眺めていたら2019という数字が目に飛び込んできており、それはジョン・ヴァーリイの『逆行の夏』に割り当てられたハヤカワ文庫SFの分類番号である訳なのですが、しかしどうして2019という数字が気になったのかと思ったらそれは来年なのでした。…

雪の積もった空港に着陸すること、その他

いつの間にか眠ってしまっていて外の白さはすでに雲の白さではなくなっており、眼下ではもう隙間から白くなった森が敷かれているのだった。そのまま唸るように進んでいくと人の家が見えて畑が見え、「雪というのは随分に整然と積もるものなのですね」と言う…

キズナアイ、人格、バーチャルYouTuberについての小論

真面目な話です。 背景 様々な人がキズナアイについて語っている。それは勿論ノーベル賞報道におけるNHKでの取り上げられ方に端を発するものである。様々な人というのは非常に様々であり、今までキズナアイを巡る言論の中心的な形成主体であった視聴者、VR関…

表現の対象について

それで結局、あなたは現実を描きたいのか、それともあなたが描きたいものを描きたいのかと問われているような気分になって、それは勿論わたしが描きたいものを描きたいに決まっているがしかしそれが現実と一致しないと考える理由があるだろうか、いやない、…

主義-否定-詭弁

世界-内-存在みたいな。 明けましたね。2月ですね。明けましたねなんて言うのは2018年最初の更新だからなのですが、すでにもう1月が手元にないということでどうにもやり切れない状態にある訳です。 そんなことは基本的にどうでもいい訳です。言いたいことは…

終わりのあとについて

別に2017年は勝手に終わればいいと思うし止めたりはしないのですが、問題はむしろ2018年が始まることにあるのではないですかね。年というものの一回性が薄れるのは次の年も似たような顔をしているせいであって、終わることに対して感傷などを抱いていられる…

左利きであるとはどういうことか

少し個人的なことを書きます。とはいえ「考えごと」カテゴリに位置する時点である種個人的なことではあるのですが。 先だってこのようなツイートをしました。 「右」の定義を「箸を持つ方の手がある側」と書いてしまって痛くも痒くもないのがマジョリティで…